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スギやヒノキ 日本の木を使って造形的に

 建築の設計は多様な条件が立ちはだかります。特に個人住宅はコスト調整とのせめぎ合いがあります。けれど、可能な範囲で、自然とともにある住宅、環境共生住宅としてのいくつかのメニューを取り入れたいものです。

 基本は日本の木を使うこと。

 輸入材木やプレファブ住宅に押されて窮地に立つ林業と、放置されたヒノキやスギの森林の健全化を計るため、熱帯雨林等の森林破壊をこれ以上広げないためにも、国産材をできる限り多く使いたいものです。近頃、やっと国産材を使うことが浸透し、木を大量に使うCLT等の新工法が注目され、建築基準法も、木造やCLTに合わせたような基準に改正されています。

「繭」では、柱と土台と床(フローリング)をヒノキに、外壁、内壁、窓枠にスギを使いました。梁は、むかしの農家の梁に使われたような太いヒノキやケヤキは、今や国産材で探すのは難しいので、梁だけは米松を使いました。最近では、国産の細かいヒノキやスギを積層にして作った集成材が流通しているので、そのような材を選択することもできるでしょう。

 ヒノキやスギは柔らかいので傷が突きやすく、椅子の生活が主流になった現代では、床材としては敬遠されがちです。フローリングは、固木のナラやタモが人気ですが、これも国産材で探すのは難しい材です。

「繭」では、傷がつくのは味わいだと割り切ってヒノキを使ってみました。無垢のヒノキの床は冬に素足で歩いても、ひんやりとした冷たさはなく、木の感触が心地よいものです。床に直に座る生活には、むしろこちらの方がよいと思います。

 全ての内壁、天井、外壁は国産のスギの板を張りました。ローコストにするために、最も安い杉板を使ったので、節もあるし、ざらつきもあります。それに天然系の木材保護塗料をたっぷり塗りました。杉板は気泡も多いので、湿気をよく吸ってくれるようです。そのため、梅雨時でもジメジメせずに、いつもカラリとしています。 木の家は、痛んだ箇所をすり替え、補修することで、長く維持することができます。メンテナンスが大変だと思われる人も多いのですが、古くなって更に味わいが増してくる素材です。


「繭」は、木をふんだんに使っていますが、山小屋やカントリーハウス、日本家屋のようなイメージから、かけ離れた造形で遊んでみました。塗装も木目を表しながらも、渋みのある水色と白を混ぜた色にしました。

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