野鳥の研究所
WING
The WBSJ Center for Wild Bird and Nature of the Globe


日本野鳥の会
鳥と緑の国際センター
この建物が竣工した1997年は、地球温暖化会議が京都で開催された年です。
バブル経済が崩壊し、温暖化会議に向けて、地球環境への関心が高まった頃の計画です。
日本野鳥の会の研究員と共に計画したこの建物は、世界を股にかけて行動する渡り鳥の研究者たちの研究所で、情報の発信、交流の場にふさわしいよう、サスティナブル建築、環境共生建築をめざしました。屋上の緑化、地域の木材の使用、最小限のノンフロン冷暖房システムによる省エネルギー、茅葺屋根に匹敵するような断熱性能の高い屋根、その屋根で集めた雨水の利用。
そして、セイタカアワダチソウやオオブタクサで覆われた土地の自然林復元も試みました。
また、建物本体にも、野鳥や小動物が観察できるような観察スペース(エンカウンター)を設けて、それをデザインのアクセントにしました。
「鳥の視点になる」ことを考えました。建築は人が使うものという当たり前の概念を変えて、鳥のきもちで建物をみたらどうなのだろう、ということを考えるきっかけとなった建築です。








鳥が羽を広げたような大きな屋根の下は、研究者達のランチスペースになったり、近くの子供達の自然教室にもなります。
この当時はまだ、「地元の木を使う」というサスティナブルな概念は浸透していない中、東京の木を用いて、大空間を木構造でデザインしました。先駆け的な試みでした。
壁に埋め込んだ巣箱には、シジュウカラなどが自然に営巣し、ここから巣立ちました。



東京都下の丘陵地にあるこの場所は、森を伐採して造成されたあと、計画が頓挫して空き地になっていた場所です。雑草が生い茂り、時折山火事も発生していたことから、野鳥の会がこの土地の管理を任され、自然林復元に取り組みました。
建築は斜面の中腹に半分埋まったように配置し、屋根が風をはらんで浮いているようにデザインしました。
自然林復元のために、コナラなど、武蔵野の雑木林を構成する樹木を植樹した他は、自然にまかせて、鳥が運んでくる種から生える植物が建物を覆います。
設計 時空遊園+日本野鳥の会
掲載
新建築 1997 11
日経アーキテクチュア 1997 10-6
日経アーキテクチュア 2003 11-10
建築設計資料 85屋上緑化・壁面緑化 環境共生への道
建築知識 1996 3 「効く植栽」91のテクニック