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昔ながらの大工が減少し、作ることが苦手な大工が増えている理由

最近、一見してやり手に見える工務店や大工さんでも、オリジナルのデザインの施工を頼むと、できない、と言われることがあります。既製品を使ったものでなくては、施工が難しいと言われることが多くなっていると感じています。


かつての大工は、天然の材料のみを用いて、一から作り上げていたものが、今は、部品を組み立てていく作業に変わってきたからだと思います。とりわけ住宅は、工場で生産された既成部品が多く、それらを組み合わせれば、一棟完成します。昔の大工のような技術が無くても形になるように、工場で作られる部材が多くなっています。


大工の仕事は、まず材木を選ぶことから始まり、その木の性質や癖を見極めて、柱や梁を切り出し、それらを繋ぎ合せるための仕口を彫む、といった高度な技が要求される大変な仕事です。大工の仕事は花形で、大工は施主から食事と休憩時間のお茶を用意してもらいながら、じっくりと仕事にとりかかっていた時代もあったそうです。

しかし、第二次世界大戦後の高度経済成長期になり、日本人の生活スタイルが変わって核家族化が進み、建売住宅が沢山作られるようになると、中には手抜きをする者もあり、欠陥住宅が社会問題となりました。

日本の木造建築は、釘を使わずに、優れた仕口の技術で組み上がっていましたが、下手な大工や、手抜きした施工では、家が傾いてしまいます。そこで、優れた技術を持つ大工以外の者が施工しても大丈夫なように、ある一定の強さを確保するために、住宅のような規模の木造建築は、柱と梁、柱と土台、土台と基礎を金物で固定する方法が義務化されるようになりました。日本の伝統的な木造建築の良さを封印することにもなってしまったのです。

住宅の施工をシステム化して、より早く、安定した住宅を供給する産業も大きくなり、大工の上手い下手によるバラツキの出ない作り方も定着しました。骨組みは、狂いの出やすい木から鉄骨に変わり、時間のかかる土壁から、工場でつくるサイディングに変わりました。木造の骨組みも、材木の製材は、工場で加工するのが当たり前のようになりました。現場では、組み上げて、アルミサッシュをつけて、外壁と内壁にパネルを貼って、既製品のユニットバスやシステムキッチンをセットして、クロスを貼って、既製品のドアをつけて一棟上がりです。

既製品に合わせてつくるから、すっきりしない部分ができてしまいますが、そんなことは気にしないで、さっさと、何棟も数多く建てることの方が優先された結果、組み立てしかできない、自分で考えて作ることができない大工が増えているのです。そして、昔ながらの大工は高齢化によって、年々減っています。


シンプルですっきりとした綺麗なディティールの実現は、建築家が描いた線の意味を理解して作ることができる大工の知識と技に支えられているのですが、残念ながら、既製品をはめる事しかやってこなかった大工には、難しいようですし、ものづくりへの姿勢が違うようです。楽な方向に流れてしまいがちです。


かく言う私も、細かいディティールを毎回書くのにウンザリする時もあり、そんなところに手間をかけても、誰がわかってくれるの、と思うこともたたあります。


だけどやっぱり、手作りの味わい、ものづくりの楽しさ、大事にしたいところです。


Sachiko IWANAGA



「繭」が上棟した時

全て手刻みで作ってくれた


#手刻み #上棟 #大工


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