小さなグレートジャーニー 移住という生活スタイル

最終更新: 2019年6月8日

近頃「移住」という生活スタイルが増えています。ここで言う移住とは、転勤のように自分の意思ではない引越などと区別しています。生まれた所だからとか通勤に便利なところだからという消極的な理由で住むのではなく、自分の生活スタイルに会った場所を積極的に探す人たちが増えてきています。東京在住者の4割が地方への移住を検討しているとの調査も報告されています。移住というと「定年後の都会から自然豊かな田舎への移住」を連想されるかもしれませんが、逆もあれば、地方から地方への移住もあります。移住の形も色々と多様化しています。かつてよりも移住がしやすい社会になっていることは確かで、インターネットの普及で仕事場の自由度が上がっていることも理由の一つかもしれません。

 人は癒しや娯楽だけではなく、自分を高めてくれる何か、自分の好奇心を満たしてくれる場所を求めて旅をし、移住をします。まちづくりとはそういった旅人、移住者たちに選んでもらえるような「どこにでもあるような」ではない「そこにしかない独自性のある街」にすること(タウンアイデンティティー)が重要になっています。アイデンティティーといっても町中をただ一つのカラーにしてしまうと言うことではありません。同じような人たちだけが住む街を想像すると非常に気持ちの悪い世界です。多様な人々が住んでのまちですからカラフルさもまた重要です。街は住人だけでなく、よそ者によって作られるとよく言われます。移住はその人の人生だけでなく、その街にとってもアクセントをもたらしてくれるのだと思います。

 およそ600万年前にアフリカで生まれた人類の祖先は、その後進化しながら、世界中に拡散してそれぞれの地域地域に棲み場を見つけ、その場ならではの生き方をし、文化を築いてきました(現在でも深海や宇宙に生息地としての可能性を見つけようとしています)。この太古の人類の旅をイギリス人考古学者のブライアン・フェイガンはグレートジャーニーと名付けました。人間は自分が生きていく上で自分に合ったニッチを探し旅をすることは本能なのです。移住とは自分の生きる場所を探す旅、小さなグレートジャーニーです。

Yoshikatsu Iwanaga

人類の移動ルート

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